熱中症予防に扇風機はやっぱり役立つ(JAMA誌から)
高温多湿環境下でも扇風機で心拍数、深部体温の上昇が抑制。
お客様とのやり取りの中で「暑い環境の中で風回しても暑いだけじゃないの?」というお話をいただくことがあります。
最近、コロナで非常に有名になった、WHO(世界保健機関)は過去、気温35℃以上の場合、扇風機を使用しないようにと勧告している、という話もあり、我々、ファン業者にとっては頭の痛い話。
確かに、体感として、むちゃくちゃ暑い中では、熱い風が吹いても暑いなと感じるケースもあるのは事実。
ただ、導入を検討されている経営者・管理者・購買の皆様、少しお待ちください。従業員の健康は「気持ちよさ」「快適さ」だけで考えるべきものではありません。(それなら多少、気持ちよくなってもいいということで、お仕事中にアルコールを飲んでもいいということになりますよね)
そこで、今回は世界五大医学雑誌(通称ビッグファイブ)の一つであるJAMAの記事をご紹介します。(大西淳子さんと言う医学ジャーナリストの方が和訳された記事からの一部抜粋です。)
忙しい方は緑色の結論の部分だけ読んでいただければ、と思いますが、要は「高温多湿環境下でも扇風機で心拍数、深部体温の上昇が抑制される」ということで、深部体温と心拍数は熱中症に高い相関関係を示すと言われている指標です。
THE FIRST FANでも体感気温が下がる、ということは商品としても謳っていますが、「熱中症防止」にとって大切なのは深部体温を下げることです。この論文はその意味でも大変示唆に富んでいると思います。
以下論文抜粋です。
世界保健機関(WHO)は、気温が35℃以上の場合は扇風機を使用しないよう勧告している。高温多湿の環境下で扇風機を使うと、かえって熱中症を誘発するという懸念があるためだ。しかし、豪州Sydney大学のNicholas M. Ravanelli氏らは、男子学生を対象に介入試験を行い、高温多湿時に扇風機の風に当たると心拍数と深部体温の上昇が抑制されるというデータを得て、JAMA誌2015年2月17日号に報告した。(中略)
扇風機の使用は、乾熱伝導を促進して身体加温を加速する可能性がある一方で、汗の蒸発を促すことによる身体冷却効果も期待できる。だが、汗の蒸発は湿度上昇とともに減少するため、湿度の高い環境では、扇風機は、心血管系(心拍数)への負荷と深部体温への負荷を減らせない可能性がある。そこで著者らは、心拍数と深部体温が速やかに上昇するレベルの高温高湿度下で、扇風機使用の影響を調べることにした。
カナダOttawa大学で、8人の健康な男性ボランティア(平均年齢23歳、平均体重は80.7kg)を登録、2013年6月5日から2013年11月6日にかけて、135分の試験を48時間以上の間隔をあけて4回行った。4通りの環境に曝露する順番はランダムに決定した。
実験室の気温は、あるガイドラインにおいて扇風機の使用が可能な上限とされている温度(36℃)、または上限を超える温度(42℃)に設定し、これを維持した。体水分が正常であることが確認された被験者を、Tシャツ短パン姿で部屋の中に座らせた。扇風機有り環境では、18インチの扇風機を被験者から1メートルの距離に置き、風速4.0メートル/秒で作動させた。
20分間のベースライン期間の後に、相対湿度を7.5分間隔で15段階に分けて上昇させた。室温36度の場合には相対湿度25%から95%まで、室温42度の場合には20%から70%まで変化させた。その間の心拍数と深部体温(食道温)、発汗率をモニターして、心拍数と深部体温が上昇し始める湿度を同定、その値と発汗率を、扇風機ありと無しの間で比較した。
心拍の上昇が始まった相対湿度は、気温36度では、扇風機有りが83%(95%信頼区間78-87)、扇風機無しでは62%(56-67)(P<0.001)。気温42度ではそれぞれ、42%(42-51)と38%(33-42)(P=0.01)だった。
気温36度で深部体温の上昇が見られたのは、扇風機有りの場合には2人に留まり、扇風機無しでは7人(上昇が始まった相対湿度は84%、80-88)だった。気温42度の場合には、深部体温の上昇が見られた相対湿度は、扇風機有りが55%(51-59)、無しは48%(42-54)(P=0.04)だった。
全身の発汗率は、気温36℃で扇風機有りは180g/時(173-187)、扇風機無しでは153g/時(140-165)(P=0.01)。気温42℃ではそれぞれ399g/時、381-417)と241g/時(209-273)だった(P<0.001)。
以上から著者らは、「健康な若い男性では、扇風機が高温関連の心拍数の上昇と深部体温の上昇を妨げることが、初めて示された」と結論。高温多湿の状況をエアコンなしで過ごす人々にとって扇風機は有用だとした。ただし、今回の対象は若い健康な男性であったことから、「他の集団では、高気温下で心拍数と深部体温が上昇し始める湿度は異なる可能性がある。しかし、熱波到来時には扇風機を使うな、という勧告は見直した方が良い」と考察している。
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